北九州文学散策 71

 乃木希典歌碑(小倉南区北方5丁目1-1陸上自衛隊小倉駐屯地資料館そば)
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 乃木希典。嘉永2年(1849)~大正元年(1912)。陸軍大将、詩人。
江戸麻布の長府毛利藩邸(現在の六本木ヒルズ)に生まれました。10歳の時、
長府に帰ります。1865年、長府藩報国隊に入り、奇兵隊に合流し、幕府軍と
戦います。1871年、陸軍少佐に任官。1877年(明治10年)、歩兵第14連隊
心得として、西南戦争に参加します。
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 1904年、日露戦争開戦に伴い、第三軍司令官(大将)として旅順攻撃を指揮、
二児の勝典、保典が戦死します。部下の半数を死傷させるなど苦戦を強いられ
ました。

1907年、学習院院長として、皇族子弟の教育に従事、昭和天皇も厳しくしつけ
られたそうです。1912年(大正元年)、明治天皇大喪の9月13日夜、妻静子
と共に自刃。享年62歳でした。
 祖国愛と忠孝の道義に徹した至誠の人として知られています。
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 日露戦争時の、旅順攻略に対する乃木の評価は、識者の間でも度々議論に
なっています。乃木無能論は、戦争当時からありましたが、これが一般化され
たのは、司馬遼太郎の「坂の上の雲」によってです。乃木の評価の大部分は、
人格的功績や軍人精神などにあったと考えてよいでしょう。
 また漢詩をよくし、詩人(号は静堂)としての評価も高いものがあります。

        「金州城外の作」
      山川草木転(うた)た荒涼
      十里風暒(なまぐさ)し新戦場
      征馬前(すす)まず人語らず
      金州城外斜陽に立つ
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 乃木希典は、森鴎外よりもずっと早く、小倉との縁が深かったのです。
乃木が職業軍人としての第一歩を踏み出したのは、陸軍少佐として任ぜられた、明
治4年11月23日からで、23歳の時でした。
 乃木は、足掛け3年、青年将校として、若い連隊長心得として小倉に在任しました。
 紫川で泳ぎ、長浜で遊び、馬借町や行橋まで、その足跡は広いものがあります。
小倉での居宅は、今のリバーウオーク(元のダイエイビルの跡)のある場所でした。
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 大正13年8月、「乃木将軍居住の跡」という御影石の碑(写真)を建立していました
が、終戦時防空壕を埋める時、誤って埋められてしまいました。戦後、そこにダイエ
イビルを建てる工事中にこの石碑は発見されました。同店の屋上に仮建立していた
もので、現在、陸上自衛隊小倉駐屯地資料館の近くに移されて建っています。
 その近くには、昭和天皇が、皇太子時代にお手植えになられた松ノ木が、しっかり
した姿を見せていました。

 熊本鎮台の歩兵第14連隊の連隊長は、中佐以上が任命されていたのです。
少佐だった乃木は中佐に昇進するまでは、心得と呼ばれましたが、実質的な
連隊長で、26歳でした。

 明治9年10月の秋月の乱では、自ら豊津に入り、、鎮圧に当たり、明治10年2月
の西南の役では、約2000人の兵を率いて、熊本の植木町田原坂へと出撃しま
した。この時に、軍旗を敵に奪われてしまうのです。このことは、乃木にとって、明治
天皇の崩御後の殉死につながる痛恨事でした。
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 明治32年6月、第12師団軍医部長として、小倉に赴任する森鴎外を新橋駅で見
送ったのは乃木でした。そのとき乃木は中将になっていました。乃木と鴎外の出会い
は、明治20年4月、ベルリンに留学していた時です。乃木は鴎外より13歳年上です。
 乃木の最期まで、二人の付き合いは続きました。
 彼の俳句や詩は、文豪夏目漱石や鴎外などに、感動を与えたと云います。

 作家森鴎外と、詩人乃木希典は、明治の陸軍が生んだ大文人であり、共に小倉に
忘れえぬ多くの思い出と文化遺産を残した人だったのです。
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 現在の、陸上自衛隊小倉駐屯地は、昭和3年に、小倉城内にあった歩兵第14連隊
が移転した跡地にあります。

 「ほのぼのとしらむ波間を見渡せば 珠の二島浮き出(いづ)るかな」(乃木希典)
       (珠の二島ー関門海峡に浮かぶ萬珠、千珠の二つの島のこと)
 「出でまして還ります日のなしときく 今日の御幸に遭うぞかなしき」(妻静子の辞世)

 写真 短歌 コメント  並平
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by dendenuta | 2007-11-08 10:56
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